時代の気分 Market Scope vol.194 Jun. 2013  文:石丸 淳

スマートフォン vs フィーチャーフォンの苦悩

個人的なことだが今年に入ってすぐの頃、携帯電話が壊れた。メールの受信フォルダが開けなくなったのである。この電話は購入から5年数か月が経過したフィーチャーフォン、所謂ガラケーである。日常に必須の“電話”という個人的な唯一のインフラであるために、仕事でもプライベートでもその故障は致命的なのだ。だというのに、この5年の間に5回の故障を数えている。普通であればそんなことは許されず、とっくに買い換えて良かったはずなのだが、残念ながらまったく購買意欲をそそるものがなく、今日に至っている。
しかも3年を過ぎたら、修理の度に\15,750取られる。そんな出費を繰り返すほどこの機種にこだわっている訳でもないのに。まぁ使い方からすれば、写真は撮らない、音楽は聞かない、TV、インターネットも見ないので、機能的にはこれで充分だったこともあるのだが、それ以上に魅力的なものがない。デザインだけで言うと個人的な好みでは歴史上、気に入ったものは一つもない。強いて挙げればiPhoneぐらいだろうか。docomoユーザーとして、もちろんSIMフリーiPhone(海外仕様)を入手して使うことは可能だが、失う機能も多い。

これまでに起きた不具合は、液晶が真っ暗になったことが1度、全体に動きが10倍ぐらい遅くなったことが1度、他はメールの何かしらのトラブルだった。これまではバックアップが功を奏して、ほぼ同じ環境に戻すことが出来たので、特段問題にはならなかったが、今回はどうやっても受信フォルダが開けず、その結果として受信フォルダ内のメールは、バックアップも出来ない状態だということだった。つまり全部失ってしまった訳で、“あの人”から来た心に残るメール(その殆どはガールフレンドからだったりして)なども、すべて、である。
しかも、その理由に一番驚いた。完全に開けなくなってしまったので調査が難しいとのことだったのだが、原因となったものは誰かから送られてきたメールに含まれる「絵文字」だというのがdocomoの見解だったのである。この機種が旧いからなのか、と訊ねると、旧世代の携帯電話が新しい世代の絵文字に対応出来ずフリーズ、あるいは何らかの問題を起こす例が確認されているとの由。むむむ、何たることか。そんな理由で保存しておいた(大事な)メールが全部パァになるのか……。

さすがに今回は心が折れたというか、いよいよ新しいものを導入するか、と考えてしまった。そこでいろいろとお勉強をしてみるのだが、最早ニューモデルは全てスマートフォンという時代、筆者にとっては要らない機能ばかりである。インターネットについては出先で思い付いた時に調べものをする、ということを叶えてくれるので、あれば使い始めるかもしれない。確かに昨年ガールフレンドと鎌倉へ行った際、彼女はiPhoneを操り、行ったことのない目的地を簡単に探し当て、それを頼りに迷うことなく着くことが出来た。
しかし他の機能については、あっても利用しないであろうことが明らかだ。とりあえずモバスイ(モバイルSuica)だけあれば良いのだろうか。だとすると他のキャリアに変えてiPhoneにすることはない。ケースにSuicaカードが入るものもあるらしいが、何もそこまでしなくても。であればdocomo製品の中で何か妥協できるものがあるのか、カタログを漁りHPを見、現物を手にしながらようやく「2013年春モデル」の中から1機種に絞り、やっとのことで、重い腰を上げてdocomoカウンターへ参上した。

ところがそこでいろいろ話すうちに(1時間も!)意外なところに落とし穴のあることが判明する。それは「電話帳」の問題であった。確かにガラケーの電話帳というのは、Web上でもいろいろ言われている通り、かなりの高機能だった。だが実は問題は機能ではなく、ガラケーの電話帳には番号が付いていることだったのである。かれこれ'80年代後半の黎明期から携帯電話を使っている身としては、もう20年ほどその番号を基準に整理してきたのだ。何しろ登録件数が多く、docomoで何かする度にスタッフがその数の多さに驚くほどだ。
では何が問題かというと、その番号を100桁単位でカテゴライズして整理をしていたことだった。それはクルマ関連が700番台、クリエイティブ関連が800番台というように、例えば弊社のオフィスは800番台の前半、水野の携帯は000番台の半ばぐらい、といった具合である。つまり番号がグループ分けの基本なのだが、それらが一覧表のように頭の中にマッピングされている訳だ。従って約700件近い登録の殆どが何番前後にあることを記憶し、最短で目的のデータにアクセス出来るようになっている。

ところがスマートフォンはそもそもこの番号というものがない。殆どのユーザーがどんどん登録をしていって、必要があればグループ分けをするといった使い方なのだそうだ。そして買い替える際にフィーチャーフォンからスマートフォンに電話帳を移すと、必然的にその番号はなくなり、すべてのデータが「あいうえお順」で入ってしまうのである。もちろん、新たにグループを設定してそこにそのデータ類を移して整理し直すことは可能だが、そのグループのフォルダ内での表示もすべて「あいうえお順」となってしまう。
それでは頭の中のマップとリンクしないではないか。そうなれば絶対に困ることは学んでいた。実は以前のデータ回復で、まるで予行演習のようにすべてのデータが「あいうえお順」になってしまって大変使い難く辛い思いをしたからだ。移動したデータをグループ分けして、そこから一つ一つ登録名の頭に番号を振る、ということに考えが至るのだが、700件近い数のデータ全部にそれを行うというモチベーションが既にない。しかも打ち辛い携帯のキーでなんて今さら無理!という感じなのである。

この間、docomoカウンターでアドバイスを数人のスタッフからいただいてきたのだが、そこで解ったことはスタッフの「個人のスキル」によって説明が全然違うことだった。その後の調べで、「ドコモクラウド」というものを使えば、常々バックアップされたデータにPCからアクセス出来て、番号を振るなどの管理がし易いことを発見したのだが、それを説明できた人はコールセンターで聞いた人だけで、カウンタースタッフは誰も説明出来なかった。もう少しスタッフもスキルを上げてもらわないと、相当な時間の無駄になる。それだけ機能、サービスが高度になったとも言えるのだが。
2つぐらい前のこの欄『危ういボーダーライン』で、様々なことのインターフェースとしてスマートフォンはさらに発展をしていくだろうと書いたが、前述のような使い方で、何れは自動車の後付ナビはなくなりそうだし、家の鍵(クルマの鍵のように持っているだけで開錠する)、最近ではトイレのセッティングまであるらしい。そう考えると、仕事上でも導入せざるを得ないのに、まだ出来ずにいる。結局のところ、自分の使い方がガラパゴスだったのか。こうなったらとことんガラケーで生き延びてやろうか、などと考えている今日この頃である。