時代の気分 Market scope vol.201 Jan. 2014  文:貴田 マリ

インドいろいろ 其の5

今年のお正月はデリー滞在の予定だったが、年末年始は思いがけず東京で過ごし、お節に初詣に新年会、そして七草粥とお正月を満喫した。日中は20℃前後というデリーとは異なる本格的な寒さに震えながら、この身の引き締まるような冷気が、八百万の神々に感謝し、新たな年を迎えるお正月には最適な気候なのだと実感した。
お正月と云えば元旦のお屠蘇に始まり、神社でいただくお神酒など、日本では神事とお酒は密接な繫がりをもっている。またお正月のみならず、お祝い事やお祭りなどでもお酒は付き物だ。しかし“所変われば品変わる”で、インドでは祝日には禁酒令が出される。
インド全土で共通の祝日は年間3日あり、この日には、飲食店やホテルでのアルコール飲料の提供や、酒屋でのアルコール販売が禁止される。事情を知らない外国人が、祝日なのでゆっくりワインでも飲みながらお昼をとレストランに行くと、店の入口には“DRY DAY(禁酒日)”の表示があり、一瞬ポカンとしてしまう。外国人宿泊者の多いホテルでも、レストランやバーではソフトドリンクの提供のみ。かろうじてルームサービスが対応している。

これまで8月15日の“独立記念日”、10月2日の“ガンディー生誕記念日”と二度の祝日で禁酒令を経験したが、昨年12月の州議会選挙の投票日と開票日の、徹底した禁酒令にはビックリした。
この選挙は、今年5月に控えた総選挙の前哨戦とも云われ、国内3州とデリー首都圏州の計4州で行われた。デリー首都圏州の投票日だった12月4日と開票日の8日には、朝8時からホテル客室内の冷蔵庫のビールやワインなど、アルコール飲料が全て撤去され、夕方に再補充されるほどの徹底ぶりだ。なぜこれほどまでに厳しくするのか?選挙がらみの酔っ払い同士の喧嘩防止かと思ったが、お酒は正しい判断を狂わせるからとのこと。解ったような、解らないような答が返ってきた。
その選挙の結果はと云えば、4州全てで最大野党のインド人民党(BJP)が、政権与党である国民会議派(INC)の議席数を上回り勝利した。
改革推進に積極的に取り組んでいるBJPが圧勝したことを受け、インド株式市場は大きく上昇し、同市場を代表するSENSEX指数は、12月9日に21,326.42ポイント(終値ベース)となり、史上最高値を更新した。また、インドルピーは対米ドルで12月11日に、一時およそ4ヵ月ぶりの高値まで上昇した。
経済成長の鈍化や、マンモハン・シン政権下で相次ぐ汚職への批判に直面するINCの低迷は、今回の地方選で鮮明となり、総選挙への戦略の練り直しを迫られている。
勝利を納めたBJPは、西部グジャラート州で経済発展を成し遂げ、党の次期首相候補となったナレンドラ・モディ同州首相を前面に出した選挙戦を展開し、5月の総選挙では10年ぶりの国政奪還を目指している。
しかし勢いに乗るBJPも、デリー首都圏では獲得議席は最も多かったものの、“汚職撲滅”や“反レイプ”を訴える新党、アルビンド・ケジリワル党首の率いる“庶民党(AAP)”の躍進に阻まれ、過半数には及ばなかった。
ケジリワル党首は、シーラ・ディクシット・デリー首都圏首相の選挙区で、同首相の議席を奪っている。また過去には、汚職撲滅を目指してハンストを行ってきた“現代のガンディー”アンナ・ハザレ氏と行動を共にしていた人物だ。
同氏は「誠実な政治の方向を進み始めたデリーの人々を祝福したい」そして、自分たちの運動は「デリーに限らず、インド全土に広がり、腐敗とインフレに終止符を打つことができるだろう」と語った。

総選挙の予定されている5月は、インドでは50℃近くまでになる夏の真っ盛り。
党首達が政権を懸けて、長く熱い戦いを繰り広げるこれからの5ヶ月の動きやいかに?
現与党と野党の逆転劇が起こるか?
腐敗政治撲滅を目指す新党が地方で支持されるのか?
大敗を喫した現与党ICNの復活はあり得るのか?
ようやく底入れの兆しが見えていたインド経済の行方を左右する政治情勢から、ますます目が離せなくなってきた。